シェアハウス、リノベ、DIY、民泊、どれをやってもトレンドに流されているようでは絶対に上手くいきません。

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ハウスコム社が主催した「不動産テック これからの不動産を考える 2017 in TOKYO」では、より良い賃貸の方法を学びたいというオーナー様が全国からお越しくださいました。

不動産業者としてはこういった意識の高いオーナー様の存在ほど心強いことは他にありませんね。

「部屋探しのサイトでお客様からの問い合わせが多い」とか「築5年以上経っても賃料が下がらない」等の特徴がある物件の傾向から、何か法則や秘訣があるのかどうか探っていくのが物件運営上の1つの方法ではありますが、昨今、そういったことが既に通用しなくなってきています。

会場にはSUUMOを手がけるリクルート住まいカンパニーより三好さん、HOME’Sを企画・運営しているLIFULLより池本さんを迎え、ダイヤモンドメディアの岡村さんにファシリテーターになっていただき、それぞれのポータルサイトにやってくるお客様のデータから読み解ける、これからの賃貸において大切なことを率直にお話いただきました。

まず賃貸物件全体の賃料の動きをみてみると、2013年から2017年までに、単身者、DINKS (共働きで子供を意識的に作らない、持たない夫婦)、そしてファミリー向けのどの間取りにおいても平均5パーセント下がっているという実態があります。

しかし興味深いことに、HOME’Sにユーザーから問い合わせがあった物件に限ってみると、首都圏全体で賃料が1パーセントほど上がっているのだといいます。

それでは、問い合わせが来るようにするには何をすればいいのか、というのが気になるところですよね。

これに関しては、今まで重視されていた「築年数」等の条件はあまり関係なく、「これがあれば大丈夫」と一概に言える条件が無くなってきています。ポータルサイトでは「ルームシェア、リノベーション、防音、ガレージ」など、フリーワード検索でよく見かけるキーワードが目立ちます。しかし、池本さんは次のように述べられました。

「私は、『ルームシェアにしましょうよ』とか『リノベーションしましょう』とか『防音にしましょう』と申し上げたいわけではないんです。そういった、自分らしさ、個人のこだわりを叶える物件が、一部の消費者には思いっきり刺さるのだということが、ポータルサイトのデータ上にも出てきていると言いたいのです。」

こういったことは私たちもまさに肌感覚で把握しているところです。
三好さんも、「『これさえあれば入居が決まる』という決定的な何かがある時代ではなくなっていると思います」と同調しており、お客様のニーズが多様化してきていることはSUUMOの調査結果にも表れているそうです。

よく話題になる“住みたい街ランキング”は、実際に住んだことがあるかどうかに関わらず単純に「憧れる街」を消費者が回答したものですが、そちらとは異なる、実際に住んでみた結果、満足度はどうかというアンケートを実施・集計した“穴場な街ランキング”というのがあるんですね。

この”穴場な街ランキング”では、オシャレというよりは「渋い」という表現の似合う街が人気となっていたり、これまで注目されることがなかった街の評価がどんどん上がってきていたり…という事実がわかるのだそうです。三好さんは次のように述べていました。

「“穴場な街ランキング”には、費用対効果といいますか、『この家賃の割にはすごく住みやすんですよ、私の街』といった消費者の気持ちが映し出されています。北千住、赤羽、池袋、大塚、駒込、巣鴨、といった街は、“住みたい街ランキング”では出てこないような街なのですが、実は住んだらすごく便利で住みやすいみたいな街が出てきています。」

確かに、誰もが知っている街に住んで満足するというのは一昔前の話で、自分に合う街を見つけたいという消費者の気持ちが高まっていることは、私たちも日々感じることです。

「どういう人が住んでいるのかなと想像できる街が、エリアとしては評価が高いんじゃないかな」という三好さんは、他にも、「母になるなら流山」というようなキャッチコピーで行政をあげて子育て層を狙い撃ちしようと取り組んでいる流山市、同様に子育て層へのサポートの厚い我孫子市なども評価がすごく上がっていることを紹介しています。

最近人気が出てきている「入居する人がDIYしても良い」という物件は通常の物件より6倍も反響が高く、お客様の需要がとても高くなっています。貸主様の負担が少ない範囲でそういった仕様に対応すれば、部屋の人気を上げるのに役立つでしょう。

しかし一方で、DIYしても良いという物件の数がある程度増えれば次第に需要に供給量が追いつき始め、それもいつしか特別なことではなくなり人気が落ち着くことは目に見えていますよね。

また、2018年の6月には民泊新法もできる予定となり、賃貸よりも民泊の方が良さそうだと思われている方もいらっしゃると思います。

3人に1人が高齢者という街も珍しくなくなり、そもそも引っ越し自体をしたがらない方が必然的に増えることになります。人口が減ると言われてもなお賃貸用のマンション建設は行われていますから、民泊が注目されるのも当然ですよね。

ただし池本さんが言うには、民泊用の物件数が伸び続けていたのは事実だけれど、ここ最近は儲からなくなっているケースが増えているのだそうです。

以上を踏まえて一つ確実に言えることは、もはや家が古かろうが、エリアが渋かろうが、賃貸だろうが民泊だろうが、「集客を楽にできる方法はない」という現実に向き合ってビジネスを考えていかなければならないということですね。

リクルート住まい研究所では「幸せとは何か」というテーマの研究もしており、三好さんはその研究結果から、次のように述べていました。

「仕事をバリバリやってお金をたくさん稼いでいることよりも、『気に入った地域で愛着のある建物に住んで、家族で仲良く美味しいご飯を食べる』というのが、どうも人の幸せに一番寄与していますよ、という結論がデータで出ています。」

「もちろん収入があって仕事の満足度が高いことが、住むエリアや建物を気に入ったものにしやすいということはあるかと思うのですが、直接的な因果関係でいうと実は住宅というのは人の幸せに与える影響が非常に高いとわかってまいりました。」

言い換えてみれば、この部屋に愛着を持って住む人はどんな人であって欲しいのか、あるいは、家族が仲良くご飯を食べるような部屋ってどういう部屋なのだろうと考え、「住む人の幸せに物件を合わせていく」努力をすることが私たちの仕事だということもできますね。

他にも幸福度に貢献する要素として、「近くの孫よりちょっと遠くの孫の存在」というのがあり、会場からは笑いが漏れていました。幸せを構成している要素というのは実は難しいことではなくて、私たちがこれまで生きてきた中で感覚的によく知っていることの方が多いということです。

いい旅館に泊まれば誰もが自然と心地よさを覚えます。また、サッカーボールにはたくさんのメーカーが発売した様々な商品があるのに形とサイズはどれも同じです。このように、住まいのニーズが多様化しているとはいっても、素晴らしい質やデザインにはしっかりした普遍性があるということがわかりますよね。

何十万年も前の先祖の時代から今にかけても変わらず、人はモノをつくる生き物だというように、私たちは根本的なところでは変わっていないのでしょう。

「いいね!わかるわかる!」と、多くの人が感覚的に感じられる幸せについて、同僚、オーナーさん、あるいは自分の家族や友達と話してみることからでも、私たちのビジネスは成功へと近づいていくのだと思います。

ハウスコム株式会社
代表取締役社長:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。2016年度、中央大学商学部客員講師に。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

 

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