子どもと企業のイノベーションの可能性を潰す「何かあったら責任取れるんですか?」というマジックワード。<田村 穂>-コラム Serendipity-Vol.43

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12月10日(日)、ハウスコムが支援させていただいている「杉並ねっこワーク」が主催する「和田堀プレーパーク」が東京杉並区の善福寺川緑地で行われました。

寒さが厳しい中、幼稚園児から中学生までの親子200人以上が集まり、地元の材木店から提供してもらった端材や公園内に落ちている枝、ダンボールなどを使って工作したり、都会ではなかなかできない火を使った屋外でのアクティビティを楽しんだり…。子どもから大人までが分け隔てなく、普段失われている何かを取り戻すかのように大声を出しながらプレーパークの中を走り回っていました。

そこでは、学校も学年も違う子ども達が混じり合って、時にはけんかしたり、時には助け合ったりしながら思い思いに遊んでいるのです。

現在の日本では、何かしら「マイナス要素」があると判断された遊びは、おおよそ禁止される傾向にあると思います。都内の公園では「危ないから」「近所迷惑だから」という理由で、ボール遊び、穴掘り、そして木に縄をかけること等さまざまなことが禁止されているそうです。「最近の子どもはゲームばかりして」とよく言われる傍ら、いざ子どもたちが公園にやってきても禁止事項が多すぎて自由に遊ぶことができない。それでは子どもたちも面白くないでしょう。そんな背景もあってゲームにばかり熱中する子どもたちが多くなっている、という流れもあるかもしれません。

私たちハウスコム社を含む世の中のほとんどの企業は、お客様の問題を解決したり、様々な形で奉仕をしたりすることでお客さまから対価をいただく「サービス業」を営んでいます。子どもたちを対象としたサービスで言えばディズニーランドが典型的な例ですが、この和田掘プレーパークのコンセプトとはそのディズニーランドとは「対極」のものであると考えていただければ分かりやすいかもしれません。

和田掘プレーパークでは、大人はダンボールや木を用意するだけです。そこに用意された「遊び」は存在しません。子どもたちが自分で考えながら、時には怪我をしたりしながらも「あ、こういうことをやったら危ないんだな」、「あ、こういうことをやったら周りに迷惑がかかるんだな」といったふうに、「遊び」を通じて感覚的に理解していくわけです。ルールが必要なのであれば、友達と楽しく遊ぶためにルールが必要なのであれば、その場で作る。こういったことを通して、子どもたちは世の中の感覚を学んでいきます。

最近、「この遊び何分でできますか?」、「あの木に登っていいですか?」と聞く子どももいるのだといいます。効率やマニュアルを重視する社会に生きる我々大人の影響を受けてのことでしょうか。

私たちが子どもだった頃は、遊ぶ時間なんて気にしませんでした。何かやりたいことがあれば大人の許可なんか求める前に身体が先に動き、何かやらかしてしまった後でこっぴどく怒られる…そんな中で様々なことを学んでいくのが普通でした。

そのように自分の欲求のままにドンドン突き進み、時には怪我をしたりしながら学んでいくのが従来の子どもたちの「遊び」だったはずです。その中で、他人の都合や世の中のルールなどに接触することで初めて、「直接大人から怒られる」ことを体感することができたんですね。

しかし今では、「何かあったら困るので」という一言により、すべての遊び心が消されてしまっている気がします。和田掘プレーパークで子どもたちの遊びを見守るプレーリーダーである「にわっち」こと丹羽史泰さんから、最近の遊び場の変化について次のようなコメントをいただきました。

「今回のようなイベントを普通にやったら、間違いなく通報されていることでしょう。それもね、最近はこういう言い方になるんです。『ご趣旨は大変理解できます。だけれども、普段の公園よりもちょっとうるさいです。盛り上がり過ぎているんでは御座いませんか?しかるべきご指導をなさったらいかがでしょうか。』」

「そう言われるのを恐れるばかりに、子どもが好奇心のままに遊んだり行動したりすることを、親が先回りして止めてしまう世の中なのです。プレーパーク以外の場面でもそれは同じです。」

「子どもたちも、大人から直接怒られるのであればまだいいんです。遠回しに忠告されたり怒られたりすると、子どもたちは自分たちがやったことを自己確認できない状態で大人になってしまうんです。それはマズイということで、こういった活動が始まったんです。」

「ここは、子ども達が“自分の責任で自由に遊べること”を保証する場です。自己責任というのは子どもたちに責任転嫁するという意味ではなくて、子どもたちが自分でやったことは自分で責任を取れるようにしてあげようよと。何がよくて何が危ないのか、どんなことをしたら人を傷つけてしまう事もあるのか、そういったことを遊びながら学べる場なんですよ」

「さらに、子どもたちが自分自身で挑戦してみて出来たとか出来なかったとかということを自分で確認できるようにしておこうと。だから、私たち大人は子どもたちを評価しません。そして、周りの大人たちにも子どもたちを評価させないように、この場を守るようにしています。」

これは子どもたちだけではなく、私たち企業という組織内でも言えることかもしれません。日本経済が右肩上がりに成長していた高度経済成長期、世の中や会社内の有り余るほどのパワーをある程度コントロールするためには、それなりの決まり事や禁止事項を設ける必要があったのかもしれません。

しかし、今後の日本経済は人口減少などに伴い停滞していく可能性が非常に高いのです。そのような社会の中では、ある程度の常識的なルール以外はすべて取り払って、従業員の方がおもいっきりパワーを爆発させられるような環境を整えてあげるのが私たち経営陣の役割だと思っております。

ハウスコムでは、子どもたちが自己責任で精一杯遊べる場所の支援を今後も全力で行っていきます。

将来的には、「プレーパーク×プログラミング」、「プレーパーク×英会話」といったふうに「自然+遊び」と様々なものを組み合わせていきたいと思っています。こうすることで、子どもたちにとって「遊び」と「学び」の境界線はどんどん無くなっていくことでしょう。例えばインターネット上で一番足りないものは、質感、感度、匂い、そして空気感だと言われていますが、プログラミングも机と椅子に座って行うのではなく、むしろ机も椅子も無い自由な空間で行えば、五感で感じたものをもっと表現できるようになるのではないかと思います。

子どもたちが「あの木に登っていいですか?」と大人に許可を求めるように、従業員の方も何かをやろうとする度に上司の許可を求めたり、上司の顔色ばかり伺ったりしていないでしょうか?

親が先生や他人をとがめるように、上司の方も部下からの提案や意見を「何かあったらおまえは責任取れるのか?」というマジックワードで潰してしまっていないでしょうか?

子どもたちは、何もないところから失敗し、怪我をしながらも新しい遊びを生み出そうとしています。私たち大人も人工知能に仕事を奪われることに、ただビクビク怯えて仕事をしたり、「怒られるくらいだったら余計なことを言うのをやめておこう」と思って仕事をしたりするのはやめましょう。どんどん怪我をして失敗しながら、資本主義という自然界の中で、たくましく生き残っていく力を身につけていかなければなりません。

「自然は経済の大先輩」とも言われます。私たち大人こそ、マニュアル社会から抜け出してもっと自由に行動しなければならないのではないでしょうか。

自然界には、マニュアルなど存在しないのですから。

ハウスコム株式会社
代表取締役社長:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。中央大学商学部客員講師。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

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