私たちが障害者の方に教えることより、障害者の方から教わることの方が何倍も多い。<田村 穂>-コラム Serendipity-Vol.33

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皆さんは、普段、障害者の方と接する機会はどれくらいありますか?障害者の方は、身体の一部が十分に機能していない分、私たち健常者が持っていない感性を持っていると言われています。

今回ご紹介する「虹色のチョーク」という本は、日本のチョークメーカーで従業員の7割が知的障害者である日本理化学工業のお話ですが、このような本を読むと本当の意味で働くということは何なのか、会社として上げた利益をどう社会に還元させていくべきなのかを考えられずにはいられません。

現在では多くの障害者を雇用している日本理化学工業ですが、一時期は市場拡大や利益追求のことを考えた時、知的障害者を雇用することが最大のマイナスになるのではないかと考えてしまったこともあったようです。

しかし、実際は、家や施設で保護されているだけでは生きる喜びを感じられなかった障害者の方たちが人々に必要とされて、生き生きと働く姿を見ることで、逆に障害者ではない人達が働くことの意味や人の役に立つ幸せを教えられたのだと言います。

障害者の方々はチョークを作る作業工程で、健常者の方が15分、30分しか続かない集中力を数時間に渡って持続させることができ、人に必要とされていることが嬉しくなると、仕事は単純作業でも、「もっとやっていいですか」と働く意欲をどんどん湧かせて仕事に取り組んでいくようになるのだそうです。

日本理化学工業が作る商品は国内だけでなく、欧米でも販売されています。つまり、これは私たち健常者が持っていない集中力や異物・異変を察知する特別な察知力が社会を支えていることになりますが、もしかすると、現在の日本では障害者の方々が持っている能力を企業がしっかりと使いこなせていないだけなのかもしれませんね。

よく言われるように「経済」という字の語源は「経世済民」、つまり本来の意味は世の中を良くして、人々を救うという意味になります。また、日本理化学工業の大山泰弘会長が考える福祉に対するお考えが素晴らしかったので、少し長いですが、ここで引用させて下さい。

「あるとき、福祉という漢字をそれぞれ漢和辞典で引いてみました。福と祉。二つとも示偏が付いていますが、これは神様が人間を幸せにする恵みを与えていることを表していると書いてありました。」

「”福”という字は『神様が人間が生きていくうえで、食べていくのに困らない幸せ』 を与えてくださっていることを表し、また”祉”という字は、止まると書いてありますが、これは『神様が人間の心に留まって、心を幸せにする』ことを表す言葉なのだそうです。人間の幸せは、物に不自由しない幸せと、心が満たされる幸せ、その 二つが必要なのです。」

私たちが障害者の方を支えているなんてとんでもないですね。障害者の方と一緒に働くことによって、私たちが教わることの方が何倍も多いのではないかという気がしています。

◆小松成美 「虹色のチョーク」 (幻冬舎、2017年)

ハウスコム株式会社
代表取締役社長:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。中央大学商学部客員講師。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

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