すぐ役に立つビジネス書とは、すぐに“役に立たなく”なるという意味である。<田村 穂>-コラム Serendipity-Vol.13

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景気低迷が深刻化し始めると、どの業界でも即戦力の人材が求められるようになります。最近、書店に足を運ぶと、「必ず結果が出る」、「1週間やれば、必ず変わる」などと言った、いわゆる即効性のある「技」だけを伝えるビジネス書が本当に多くなってきたように思いますね。

当たり前のことですが、松下幸之助さんや西郷隆盛が言うように、「心・技・体」の技だけ学んでも、心と体、つまり人間力がなければ、技の力は活かすことはできません。

私の経験から言うと、人間力を鍛える一番の方法は、古典や論語など偉大なる精神力をもった偉人たちが、次世代の人達のために書き残した書物に触れることです。

ビジネス書から得られるスキルと古典や論語を読んで血肉化する人間力は掛け算の関係にあります。

世の中に必要とされるビジネススキルは時代とともに変わっていくことでしょう。しかし、人が何を信じ、どんなことに心を揺れ動かされるといった、「人としての基本的なベース」は100年、200年、もしくは1000年以上経っても、それほど大きく変わることはないでしょう。

古典を読むことで、ようやく自分たちの目の前にある悩みや苦しみに、隠された本質を理解することができます。孔子が2500年前に言ったことが現代の環境に当てはまることに気づいた時、ようやく古典の凄さを理解することができるのです。人間の基本的な価値観は1000年以上変わらない。これは本当に凄いことですよね。

やはり、何百年、何千年と語り継がれてきているということは、これらの書籍が何らかの形で人々の役に立っているという証拠なのだと思います。

孫正義さんも織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康などの偉人を徹底的に研究して経営に活かしていると何かの本に書いておられました。

京セラの稲盛和夫さんは、西郷隆盛の「南洲翁遺訓」を愛読しています。松下幸之助さんは江戸時代の思想家、石田梅岩の「都鄙問答」を読み、彼のところに助けを求めてくる人たちには「梅岩を読みなはれ」と勧めていたそうです。

古典に即効性はありません。しかし、すぐ役に立つビジネス書というのは、裏を返せば「すぐ役に立たなくなる」ということもしっかり理解しておいて下さい。

何百年、何千年と時空を越えて受け継がれてきた言葉には、信じるに値する価値があるものです。つまり、「古いものが一番新しい」と、信じて、今日も一日頑張っていきましょう。

■参考書籍

◆小倉広・人間塾「ブレない自分をつくる『古典』読書術」(日刊工業新聞社、2016年) ◆北尾 吉孝「仕事の迷いにはすべて』論語』が答えてくれる」(朝日新聞出版、2013年) ◆齋藤 孝「古典が最強のビジネスエリートをつくる」(毎日新聞社、2014年) ◆大下英治「孫正義 起業のカリスマ」(講談社、2005年) ◆北尾吉孝「仕事の迷いにはすべて『論語』が答えてくれる」(朝日新聞出版、2012年)

ハウスコム株式会社
代表取締役社長:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。中央大学商学部客員講師。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

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