CNET Real Estate Tech 2018「変化はコントロールすることはできない。できるのは変化の先に立って、変化のリーダーになることだけ。」

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11月7日に、ハウスコム主催の「テクノロジで変革する不動産業界の最前線 ~Real Estate Tech 2018~ “業界のオンライン化に向けて”」を開催させていただきまして、不動産業界関係者以外の方々にも多くご来場いただき、非常に面白いディスカッションをすることができました。

冒頭で、まずは私の方から、今年の夏に中国へ行った時の話も交えて、中国の人たちが「車」という概念ではなく、「移動」そのものの概念が大きく変わるという前提で動いているという話をさせていただきました。

例えば、中国検索エンジンの最大手「バイドゥ」は自動運転の開発に力を入れていますが、ただ単にハンドルやアクセルを無くすということや、ただ単にA地点からB地点に効率よく移動するということではなく、電話がスマートフォンに変わったように、50〜100年単位の変化の中で、「移動」というものを根本的に変えようとしています。

これは、私たちの不動産の業界で考えると、都市の概念、生活の概念、そして、住む空間の概念が根本的に変わることを意味しているのでしょう。

例えば、今までの自宅というのは、仕事から帰って、寝るだけというものでしたが、テレワークというものが普及すれば、自宅が職場になり、オンライン医療が発達すれば、自宅が病院になり、ネットフリックスを通じて映画を見れば、自宅が映画館になり、そして、3Dプリンターを使ってモノを作れば、自宅が工場にもなるといったように今まで当たり前だった価値観がどんどん変化していきます。

アメリカや中国の人たちが、テクノロジーの力を最大限に活用することで、今とは違った未来を求めているように、私たちが変化を好もうが、拒もうが、不動産の業界もテクノロジーによって確実に変わっていくのです。

ピーター・ドラッカーが言ったように、変化をコントロールすることはできません。できるのは変化の先に立つことだけで、変化をチャンスと捉えて、リーダーとなるか、それとも、変化を危機だと捉えて、守りにはいり、時代遅れの企業になってしまうのかのどちらかしかないのでしょう。

使える最新のツールは最大限に活用して、次の事業のための時間を生み出す。

私の簡単なご挨拶の後は、ナーブ株式会社の多田さんより、スマホの次のプラットフォームであるVR(バーチャル・リアリティ)、そして、株式会社Tryellの野田さんからはハウスコムも積極的に導入を進めているIT重説が、不動産業界にどういった影響を与えるのかという部分をお話いただきました。

VRと聞くとゲームのようなエンターテイメントに使われているという印象が強いかもしれませんが、実際はゲーム以外のところで活用されている部分が圧倒的に多く、百聞は一見に如かずという言葉の通り、どれだけきれいな写真や動画を見ても、VR上での一回の体験に勝るものはありません。

多田さんのお話によれば、VRを不動産の店舗に導入することで、無駄な内見が減って、ある店舗では成約率が20%も上がり、現在、VR内見導入店舗は5000店舗を超えているのだと言います。

野田さんのお話によれば、これまでオフライン上で行っていた内見や様々な不動産の業務をIT重説やオンライン内見などのインターネット上で行うことによって、お客さんの移動コストが削減されたり、店舗側もお客さんが直接店舗に来店されていた時に比べて、一回あたり平均40分の時間を削減できるようになったそうです。

不動産業界に限らず、企業というのは常に提供するサービスの質を上げながら、業務を効率化して、将来に対する投資の時間を確保しなければなりません。

今期の業績とは、今期行動したものだけのものではなく、去年、一昨年から行動してきたものの組み合わせですから、いま目の前の業務だけに100%の時間を使ってしまうと持続的に成長していくことが難しくなってしまいます。

そう言った意味で、ハウスコムでもナーブさんやTryellさんが提供してくださるツールを最大限に活用して、効率化できるところは徹底的に効率化し、常に将来の投資のための時間を生み出せる「時間の大蔵大臣」になっていかなければなりません。

ナーブさんとTryellさんのお話のあとは、ニューヨークと中継を繋いで、株式会社セイルボートの西野さんにアメリカの不動産テック事情も交えながら、不動産業界の電子化についてお話をしていただきました。

一般的な認識として、不動産テックはアメリカの方が数年先を行っている感じがしますが、西野さんのお話では日本とアメリカの不動産テックの意識の差はほとんどなく、アメリカの家賃の支払いの7割はアナログの小切手なのだそうです。

しかし、アメリカでは一部の突き抜けた数%の企業がイノベーションを起こしており、例えば、中長期で大きなビルを建てたりする時のコンストラクト・マネージメントなどをITで一気に効率化するといったような、日本ではあまり馴染みのないサービスなどもどんどん生まれているのだと言います。

西野さんは不動産業界の一丁目一番地である電子化はすなわちシステム連携なのだと言います。

つまり、不動産業界は、家賃保証、保険、管理システムなどの様々な周辺業者が複雑に絡み合いながら業務が進んでいくため、それぞれの人たちが連携してネットワーク化できるプラットフォームを構築していく必要があるのだと何度も強調されておりました。

不動産業界の電子化が進み、先ほどのVRやIT重説などがどんどん普及してくると、不動産もアマゾンや楽天のように部屋から一歩も出ないで完結するECショップのようになっていくだろうと西野さんが仰る通り、ベンチャー企業さんが新しいツールを開発し、私たち不動産仲介会社がそれを上手く活用することで、リアルとテクノロジーが上手く融合し合い、まだ、お客さんが体験したことがない新しい顧客体験を提供することができるようになっていくことでしょう。

もう、中途半端な計画はいらない。まずはやってみて、修正を繰り返しながら、進めていく。

ベンチャー企業3社のお話を聞いた後は、「オールドエコノミーから見たオンライン化の流れ」というテーマで、東急住宅リース株式会社の佐瀬さんとソフトバンクコマース&サービス株式会社の小野さんにお話をしていただきました。

東急住宅リースの佐瀬さんは、ベンチャー企業と協業した経験から、最初から完璧を求めず、まずはやってみることで問題点を洗い出し、そこから何度も修正をしながら計画を作っていくDCPA(Do→Check→Plan→Action)のサイクルを意識することが大切だと仰います。

また、佐瀬さんのお話の中には、ベンチャー企業は自分たちのプロダクトに非常に自信を持っているが、この不動産業界独特のネットワークを理解していないため、作ったものを試す場所を探するのに非常に苦労するというお話もありました。

iPhoneが発売された当初の品質は、ノキアやブラックベリーの方が優れたいたにも関わらず、iPhoneが成功した一番の要因は、「App Store」を通じて、外部の開発者とネットワークを築いたことだと言われる通り、ハウスコムを含めたオールドエコノミー側にいる企業はベンチャー企業や業界外の人たちをどんどん巻き込んで、新しいビジネスの生態系を作っていかなければなりません。

ソフトバンクコマース&サービスの小野さんは、ほんの数年前まで、賃貸契約は電子化できないと言われていたにも関わらず、ここ数年でどんどん普及し、もう賃貸契約を電子化することはグレーではなく、ホワイトの領域まで来ているのだと言います。

また、現在、ハウスコムでも試験的に導入している賃貸の更新手続きの電子化も、封筒で送っていたら回収まで2〜3ヶ月かかっていたものが、その日に分かるようになり、今までは各店舗で行っていた賃貸の更新手続きも効率的に本社で一括して行い、今後はオーナー様との契約もどんどん電子化を進めていくといったように、テクノロジーが業界をどんどん変化させていっています。

不動産仲介業は、今後、総合的なライフプランナーになっていく。

それぞれの企業様のお話が終わった後は、ソフトバンクコマース&サービスの小野さんにモデレーターになっていただき、ディスカッションを致しました。

「オンライン化が進むと仲介店舗は無くなるのか?」という議題では、私が様々な場所で繰り返し述べているように、店舗を「道具」として見た場合は、電話がiPhoneに変わったように、店舗というものの存在は無くなっていってもおかしくないが、店舗を「制度」や「役割」として見た場合、不動産の店舗は無くならないというのがベンチャー企業さん達も含めて、皆さんの共通の認識でした。

逆を言えば、店舗が変わらず今のままの運営をずっと続けていたら、確実に衰退していくということでもあります。大切なのは、ナーブの多田さんが仰った、アナログで集客していた時代から、スーモやホームズなどのインターネットを使って集客するのが主流になったように、業界の流れが変わる時にリーダーになるか、ならないかという部分なのでしょう。

次の議題は、「なぜ、不動産業界は紙が多く、デジタル化が進んでいないのか?」というものでした。

こちらは、セイルボートの西野さんも仰っていたように、もともと私たちの先人が築いてきた不動産業界の仕組みというのは、管理会社さんがあって、大家さんがあって、そして、仲介会社さんがあるという、しっかりと役割分担された、非常に合理的かつ効率的なものでした。

しかし、ユーザー側から見ると、管理会社さん、大家さん、仲介会社さんと、しっかりと役割分担されていた部分が逆に壁となってしまって、それぞれがネットワーク化されていないため、ユーザーさんにとっては非効率な仕組みになってしまっているのです。

従って、いくら仲介業者さんが単独でFAXを無くし、管理会社さんが単独で電子化を進めたとしても、管理会社さん、大家さん、仲介会社さんが一貫した共通のプラットフォームを作らなければ、ユーザーにとっては効率的な仕組みにはならないということです。

また、「物件の選び方や住み方の変化」というテーマも議題に上がりました。

私が日々店舗に行って感じることは、2000年代から2010年代前半にかけては、「私は、波乗りをするので湘南に住みたい」、「私は、サブカルが好きなので、高円寺や下北沢に住みたい」などと言ったような、「ライフスタイル」を意識して住む場所を選ぶ人が多かったのですが、2010年代後半あたりから、長期的な「ライフ”サイクル”」を意識して住む場所を選ぶ人が増えてきたような気がします。

東急住宅リースの佐瀬さんが仰るように、少しずつではありますが、引っ越しのトップシーズンが一つの時期に固まらず、一年を通して平準化してきているなという印象を受けます。

これは、従来の会社の事情で住む場所を変えるという背景から、リモートワークや100年ライフなどといった様々な概念が重なり、10年後、20年後の自身の姿を意識したライフサイクルを軸に住む場所を選ぶ人たちが増えてきている傾向があるからでしょう。

こうなってくると、佐瀬さんや西野さんが仰るように、不動産も以前のように少数のいい物件だけを大量に紹介するモデルから、ある人にとっては100点だけど、ある人にとっては0点といったようなニッチな物件もアマゾンのようなロングテールのビジネスモデルで紹介することができるようになっていきます。

そして、賃貸の価値は駅に近い場所や賃貸年数などのハード面だけではなく、人と人を繋げるWeWorkやある特定のコミニティーがある場所といったように、目には見えないソフトな面も今後は大きな付加価値を生み出す要因になってくるでしょう。

そう言った意味で、もしかすると、10年後、不動産仲介業は総合的なライフプランナーに変わっているかもしれません。

Real Estate Tech 2018を通して、感じたこと。

今回、お話を聞いたり、ディスカッションをしていく中で、色々なことを考えました。

今まさに起こっている世の中や業界内の変化をハウスコムは「危機」と取るのか、それとも「チャンス」と取るのか、正直それはどちらでもいいのだと思いますが、一つだけ間違いなく言えることは、私たちが変わろうとしなければ、時代の変化に飲み込まれて、あっという間に時代遅れの企業になってしまうということです。

幕末の人たちのように、欧米の侵略の危機感によって動き出す人もいれば、今回お話いただいたベンチャー企業さん達のように変化を最大のチャンスと捉えて、もの凄いスピードとパワーで前に進もうとする人たちもいます。

デジタルカメラが急速に普及し、ほんの数年の間に利益の2/3が無くなってしまった富士フィルムさんは、もうスピードで会社を変化させ、2007年には売上と利益で過去最高を記録しました。

しかし、長年、富士フィルムさんのライバルであった世界最大の写真用品メーカー、コダックは変化に対応するのが遅れ、窮地に追い込まれてしまっています。

「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」という有名な言葉の通り、私はここ2〜3年間、社内で「不動産業界はこのまま変わらないでいられるだろうか?」という問いをずっと投げかけてきました。

私があまりにしつこく、うるさく同じことを繰り返すので、最近ではそれが行動となって現れ、社内でも様々な新しいプロジェクトがどんどん立ち上がってきています。

私のような年配者が危機感を感じ、若い人たちが変化をチャンスと捉えて、動き出せば、きっと日本の不動産業界の未来は明るいと言えるでしょう。

ハウスコム株式会社
代表取締役社長:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。2016年度、中央大学商学部客員講師に。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

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