元サッカー日本代表主将・宮本恒靖氏×ハウスコム株式会社 代表取締役社長 田村 穂氏「100年先を見据えた暮らし方、生き方を考える」-後編-

「1年半先と100年先を見据えた暮らし方」を考えるメディア「Living Entertainment」を立ち上げ、働き方、生き方に関するコラムを発信しているハウスコム。前編に続き、「人生100年時代」を生きる上での考え方について、ハウスコム代表取締役社長・田村穂氏と、元サッカー日本代表主将の宮本恒靖氏が対談を行いました。経営者とスポーツ指導者という異なったフィールドにいる2人の、自分らしい人生の描き方とは。

いろんな顔を持つ自分でいい

宮本:人生にはいろんな選択肢があっていい、というのが僕の基本的な考え方です。前回の対談で、田村社長が「営業の限界を感じて大学院で経営学を学びなおした」とおっしゃっていた話も、とても素敵だなと聞いていました。

田村:ありがとうございます。仕事を一度中断することを、“レールから外れる”とか“挫折”と捉える人もいるかもしれませんが、「大学を中退して大学院に行きなおす」という遠回りをしたことが私には貴重な経験でしたし、必要性を感じて経営を体系的に学んだから今があると思っています。

宮本:そうですよね。スポーツの世界でも、“挫折”へのとらえ方にはもどかしさを感じることが多いです。例えば、サッカー選手を目指して努力するのはすばらしいことなのですが、プロになれなかったら挫折と捉え、ぱたっとサッカーを辞めてしまう人がいます。「試合に出られないメンバーが応援するだけ」という状況を美談として語ることが多々ありますが、「それじゃ悔しいだけだし、つまらないじゃないか」と思ってしまいます。もちろん仲間を応援すること自体は素晴らしいことなのですが、レギュラーになれなくてもそれぞれのレベルでプレーを楽しむ機会がもっとあれば、社会人になってからのスポーツ人口はもっと増えるのではないかと思うんです。日本はグラウンドの数が少ないなど物理的な問題もあり、一筋縄ではいかないのかもしれませんが。ただ、自分の道は1本しかないと頑なに考えすぎて、“道からこぼれてしまった”と捉えてしまう人がいるのは、残念なことですよね。

田村:そうですね。自分がいる環境を変えてみたら、見える景色が変わるかもしれないと柔軟に思えることは、この変化の時代を生き抜く力につながると思います。

世界の広さを知っている人が強い

田村:現在宮本さんは、ガンバ大阪U-23監督として、まさに「人生100年時代」を生きる若手選手たちを育てていらっしゃいますよね。彼らに対して伝えたいことはありますか。

宮本:「欲深くあれ」というメッセージは発信し続けたいと思っています。ガンバ大阪U-23にいる選手たちは、皆、高い技術力を持った選ばれた存在です。もったいないなと感じるのは、とても恵まれた環境でサッカーができているのに「僕はこの程度の選手だから」と高い目標を掲げようとしなかったり、絶対に点を取るんだという闘争心が見えなかったり、突き抜けたギラギラ感がないところです。僕が18歳の頃って「試合に出て高い給料をもらうんだ!」ってみんなが思っていたし、プロになるのはそういうマインドを持った選手でした。「プロを目指します」と言っているのに態度がすごく控えめで、むしろ、マリモストの活動で出会うボスニア・ヘルツェゴビナの子どもたちの方が、「俺が点を決めるんだ」といったような自己主張が強いと感じる時があります。ここぞという瞬間に全力を出し切るエネルギーの強さを、選手たちにももっと求めたいですね。

田村:なるほど。私も、営業の子たちと話をしていると「どうしてそこで諦めちゃうの」ともったいなさを感じることがあります。当社の場合は、大家さんやお客さまとのコミュニケーションの場での話ですが、「こう言われたから」とすぐ引っ込んでしまう。もっと踏み込んで話をしてみたら違う言葉が引き出せるかもしれないのに。私は企業のトップとして、社員一人ひとりに「可能性はもっともっとあるんだ」というポジティブなメッセージを伝え続けるしかないと思っています。

宮本:もっともっと…と自分に対してどれだけ思えるかが大切ですよね。今の環境に安穏としている人に、突き抜けた成長はないと思います。ガンバ大阪で見ていた選手でいえば、宇佐美(貴史選手)や井手口(陽介選手)には「俺が一番になってやる」というタフさを感じます。そして、高い目標を見据えて、今の環境に満足しない姿勢は、好奇心の強さとつながっていると思うんです。サッカーに集中するのは前提としても、サッカー関係者以外の人とも付き合っていろんな話を面白がれる人、サッカー以外の世界も広いと理解できている人の方が、感情の切り替えがうまいし、ストレスをうまく発散できるので集中力も高い気がします。昨年まで指導していたガンバ大阪ユースの選手たちには、同じ高校に行って同じグラウンドで練習し同じ寮に帰るメンバーが多くいますが、「毎日同じメンバーとばかり一緒にいないで、いろんな場所に人脈をつくっておきなさい」と伝えていました。

田村:どんな道に進むにせよ、広い視野を持っていることが、いつか自分を助けてくれますよね。

宮本:そうですね。いろんな顔を持った自分がお互いにいい刺激を与え合うことが大事なんじゃないかと思います。

取材協力:エートゥジェイ

<フリーライター>
取材・文:田中 瑠子

<プロフィール>
株式会社リクルートで広告営業を3年間経験。のち、幻冬舎グループで2年間の書籍編集を経て、フリーランスの編集・ライターに。東京ヤクルトスワローズのオフィシャルライターとして選手、監督インタビューを3年間行い、人物インタビューの経験を積む。同時に、実用書、ビジネス書、雑誌の執筆を幅広く手掛ける。

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