スポーツを楽しむことでボスニア・ヘルツェゴビナの民族融和につなげたい。宮本恒靖氏率いるプロジェクト「マリモスト」メンバー2人の思いとは。vol.5

  • Twitter
  • Facebook

「スポーツのチカラを、ボスニア・ヘルツェゴビナの子どもたちにどう伝えていくか」

ボスニア・ヘルツェゴビナのかつての紛争地モスタルに、スポーツアカデミーを作り、子どもたちを対象にしたサッカークリニックを運営している「マリモスト(現地語で小さな橋)」。宮本恒靖さんが発起人として始まったこのプロジェクトを支えているのが、特定非営利活動法人Little Bridgeの2人、樋口昌平さんと玉手伸幸さんです。「スポーツのチカラを、ボスニア・ヘルツェゴビナの子どもたちにどう伝えていくか」。組織運営の面から見えてくる課題ややりがい、「マリモスト」への思いを聞きました。

特定非営利活動法人Little Bridge 代表理事 樋口昌平さん

私は前職がJリーグの職員だったのですが、「スポーツだからこそ超えていけることはたくさんある」という思いをずっと持っていました。宮本の修士論文が新聞記事で紹介されたとき、「このプロジェクトを実現化できないか」電話をかけてきたのが、元JICA職員で現在はJリーグに勤める元同僚だったんです。他にもさまざまな人のつながりにも恵まれ、本腰を入れて活動しようと特定非営利活動法人Little Bridgeの立ち上げに至りました。

私の原体験として、スポーツは言葉を越えていける、という思いがあります。一つのボールを介して、あるいは球技以外のスポーツでも、一緒に体を動かすだけで、共通の言語を持っていなくても気持ちを通わせられる。だからこそ、このプロジェクトは何かを動かせる、と思っています。まだ「これをやった」と言えるものは何もありません。スポーツアカデミーの開校セレモニーに参加し、「ようやくここまできた」と感極まるものはあったけれど、まだまだこれから。この小さな活動が実際に民族融和をもたらすなんて言い切れないし、ボスニア・ヘルツェゴビナという国が持つ歴史を前にしたら僕らの存在なんてちっぽけなものかもしれません。

でも、マリモストに参加してくれた子どもたちの心に少しでもインパクトを、心のレガシーみたいなものを残せたら、それでいいんです。「小さい時に違う民族の子と一緒にみんなで楽しくサッカーをした」っていう原体験が、もしかしたら、10年後、20年後に民族間の垣根を越えるきっかけになるかもしれません。「マリモスト」に参加したことで何らかの気づきがあって、将来、国や地域のリーダーが出てくる可能性もあります。紛争後の民族対立の問題は、ボスニア・ヘルツェゴビナ以外でも、いまや世界中で取り組むべき課題になりつつあります。「マリモスト」の活動が、他の国や地域でも応用できる事例となればとてもうれしいですね。

特定非営利活動法人Little Bridge 理事・事務局長 玉手伸幸さん

「マリモスト」の活動には、代表理事の樋口に誘われてジョインしました。樋口とは、日本サッカー協会が主催する、スポーツクラブのマネージャー育成のカリキュラム「スポーツマネージャーズカレッジ」で同期だったんです。本業は、塾講師とサッカーコーチ。子どもたちの教育という点で、「マリモスト」の活動に親和性があるんじゃないかと声をかけられメンバーになると、見える景色が一気にグローバルへと広がっていきました。

ボスニア・ヘルツェゴビナに初めて足を踏み入れたとき、目に入るのは、日本との“違い”ばかりでした。でも、現地のプロジェクトリーダーであるジェナンとコミュニケーションを重ね、スポーツアカデミーの拠点モスタルに何度も足を運ぶうちに、仕事を進める上での共通認識、共有できる思いなど“同じもの”の多さを感じるようになりました。

当面の課題は、活動を円滑に進められる仕組み作りです。理想は、現地で参加者から直接お金をきちんといただける団体になること。その仕組みができれば、「マリモスト」をモデルに、他の国や地域にも展開できる可能性が広がります。どんなに「社会的に称賛される活動」をしていても、予算をきちんと確保して運営を続ける体制がなければ、ただの理想論に終わってしまう。事務局長として、これからが腕の見せ所だと思っています。

取材協力:エートゥジェイ

<フリーライター>
取材・文:田中 瑠子

<プロフィール>
株式会社リクルートで広告営業を3年間経験。のち、幻冬舎グループで2年間の書籍編集を経て、フリーランスの編集・ライターに。東京ヤクルトスワローズのオフィシャルライターとして選手、監督インタビューを3年間行い、人物インタビューの経験を積む。同時に、実用書、ビジネス書、雑誌の執筆を幅広く手掛ける。

Little Bridge:活動を支える

サービス・イノベーション室:安達

  • Twitter
  • Facebook

オススメの記事

2019/02/11

「一歩入ると静かな住宅街。荻窪は家族と落ち着いた暮らしを送るのに最適の街。」ハウスコム株式会社 荻窪店 店長 梅沢朋和

2019/02/05

「夕方5時までモーニング。名古屋の喫茶店モーニングの発祥地、一宮。」ハウスコム株式会社 一宮駅前店 店長 坂口宏昭

2019/02/04

一人では新しいものは生み出せない「ビートルズやクイーンこそが最高のビジネスモデル」