仕事に厳しさは不可欠「でも終わったら、後は楽しくやったらいいじゃないか」<田村 穂>-コラム Serendipity-Vol.6

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青山学院が駅伝で初優勝した2015年、青学の原監督は、優勝を目指すチームの計画を「ワクワク大作戦」と名づけたところ、他校や陸上界の関係者から「何をふざけたことを言っているんだ」という目で見られたそうです。しかし、ビジネスの世界で考えた時、従来の経営学では説明のつかないところをしっかりとした形と結果で見せてくれたのがスポーツの世界でした。

普通、陸上競技というのは、笑うことなど許されず、自分を殺して、ひたすら修行僧のように練習を繰り返すことが当たり前のスポーツですが、このような軍隊方式の指導は今の時代には合っていないとして、原監督は次のように述べています。

「もちろん、 ハードな練習は不可欠だ。ニコニコ笑いながら練習しているだけでは強くなれないことなど百も承知している。そうではなくて、練習では修行僧のように自分に厳しく走るけれども、練習や試合が終わった暁には楽しくやったらいいではないかというのが私の考えだ。」

現在、多くの企業が何とか業績を上げるために、「効率化」、「スキルの標準化」そして「パフォーマンスの最適化」など様々な手法を導入してきましたが、結局それは人々の人間味を失わせ、職場のストレスや人間関係、そして社会的にもうつ病や自殺率など様々なところで悪影響が出始めています。

青学は原監督が急にチームを強くしたように思われがちです。しかし、実際は土壌づくりに10年近くかかっており、最初の3年間は競技の指導というよりは、生活指導が主な仕事だったそうです。

駅伝というのは「心の襷リレー」とも言われます。原監督は、飲み会はもちろん、選手を家に呼んだり、映画に一緒に行ったりして、常に一緒にいることを意識していると言いますし、本田宗一郎さんも、数時間、工場で怒鳴り散らした後に、「オイ、池袋にいい店がある。飲みに行くか」と誘うなど、怒っても道理と人情に溢れていたことが、たった数十年で世界のホンダを作り上げた原動力だったのでしょう。

青学のように楽しそうに練習し、笑顔でゴールするようなチームはなかなかありません。恐らく青学の走りが私たちに教えてくれることは、私たちは経営者、ビジネスマン、マネージャー、そして従業員である前に一人の人間だったということです。もしかすると、スキルの向上、数字の管理の前にやるべきことがあるのではないでしょうか。

1.原晋 「魔法をかける アオガク『箱根駅伝』制覇までの4000日」 (講談社、2015年) Kindle

2.原晋 「逆転のメソッド 箱根駅伝もビジネスも一緒です」 (祥伝社、2015年) Kindle

3.原晋、原田曜平 「力を引き出す『ゆとり世代』の伸ばし方 」 (講談社、2016年) Kindle

4.「田宗一郎という生き方 別冊宝島編集部」 (宝島社、2014年) P82

ハウスコム株式会社
代表取締役社長:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。中央大学商学部客員講師。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

サービス・イノベーション室:安達

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