企画書は6週間寝かせて、最低10回は読み直せ。ハウスコム株式会社 – コラム – Vol.59

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信号やエレベーターは1分。コンビニのレジは2分。――これが何を表しているか分かりますか?

実は、人が待たされてイライラし始めるまでの時間なんです。シチズン時計株式会社がビジネスパーソンを対象に待ち時間の意識調査を行ったところ、現代人がどれだけ「待つ」のが苦手なのかが浮き彫りになりました。

臨床哲学者の鷲田清一さんはこのようなスピード重視の現代を問題視しており、「現代人は最短で多くの成果を出すという特定の価値観でしか物事を見られなくなっている」と苦言を呈しています。そんな鷲田さんは、「待つ」ことで成しうる成果もあるのだと、ご自身も原稿の依頼が入ってもすぐには取り掛からずに締め切りギリギリまで「待つ」のだそうです。

「原稿の依頼があっても、締切りギリギリまで寝かす、というか待ちます。テーマがあればいつでも書ける。でも、そのテーマを頭に置きながら待つと、普段は見過ごすような情報がアンテナに引っ掛かるんですね。(中略)これも『待つ』の効用であり、企画書を作成するなど、ビジネスの世界でも同じではないでしょうか。」――鷲田清一さん

アメリカの小説家・スティーヴン・キングさんは、いったん原稿を書き上げてもすぐに他の人に見せることはせず、最低6週間は机の引き出しの中に眠らせておくと言います。時間を置いた後に読み返すことでストーリーやキャラクターの穴が明らかになり、そこに修正を重ねることでより良い作品に仕上がるのだそうです。

最終的に完成するまでに読み返す回数は10回以上。この作業を繰り返すことで自分の作品を再発見し、より好きになれるのだとか。6週間「待つ」時間があったからこそ、「スタンド・バイ・ミー」を筆頭に数多くの名作が生まれたのでしょう。

「急いでくれと頼まれても、それは無理」と話すのは、2014年に亡くなった名俳優・高倉健さんです。

高倉健さんはフリーランスの俳優として活動していたため、出演する映画は自分の判断で決めていました。その判断基準は「やりたいかどうか」のみ。やりたいと思う仕事じゃなければ出演は断り、「これならばやる」と思える映画のオファーが来るまではじっと待っていたそうです。

「仕事を決めるにはまずホン(脚本)を読みます。ホンのなかに一言でもいいから、ゾクゾクっとくるセリフがあればやることにしてます。ただ、『急いで読んでくれ』と頼まれても、それは無理です。ホンは体調を整えて、真剣に読まないと、受ける印象が違ってしまいますから。」――高倉健さん

一般的に「待つ」時間は無駄な時間と考えられていますが、実はそこまで価値のないものではないようです。いいアイデアや成果はスピーディーに仕事をこなすよりも、時にはスピードを緩めることで得られるかもしれません。

◆鷲田清一 「「待つ」ということ」 (2013年、KADOKAWA / 角川学芸出版) Kindle ◆スティーヴン・キング 「書くことについて」 (2013年、小学館) ◆野地秩嘉 「高倉健インタヴューズ」 (2012年、プレジデント社) Kindle

サービス・イノベーション室:前原

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