従業員千人から二千人のフェーズに向かうためには、企業も一度すべて溶かして、固め直さなければならない。

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今年1/21のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に、囲碁棋士・井山裕太さんがご出演されていたのをご覧になりましたでしょうか?

井山裕太さんは、囲碁界史上初の七冠達成者で、誰もが認めるプロ中のプロですが、これだけの知識、経験、そして、実績があっても、一局、一局ものすごく悩んで決断されている場面がすごく印象的でした。

井山さんの囲碁のスタイルは、極めて基本的な手を打ち続けていって勝負に勝つというものなのですが、時に基本スタイルからは外れた「ふと浮かんだ手」を打つことでオリジナリティーを生み出していくのだと言います。

囲碁で勝つための戦略というのは、世界的に研究が進んでいて、「この手を打てば、こういった結果になる」という結論はある程度出ており、もちろん、井山さんもその研究結果はすべて知っているのです。

しかし、井山さんは時に研究では「良くない」と結論づけられている手を打って失敗し、終わった後で「なぜあの時、あのような冒険をしてしまったのか?」とじっくり考えることで、次に繋げていくのだと言います。

私も自分の経験に照らし合わせてみると、「これは会社にとって良いことなのか?それとも悪いことなのか?」と判断に迷うことが日々あります。

「これはビジネス的には成立するけど、従業員の幸せには繋がらないのではないか?」、「まだ、全く結果が予想できない事業にどれだけの時間と予算を投資するべきなのか?」など、悩みは言い出せばキリがありませんが、その決断が正しかったかのか、間違っていたのかは、実際に時間が経ってからではないと分かりませんから、限られた時間の中で、自分が思うベストの判断を下していくしかありません。

井山さんは、プロは「読み」よりも「判断」で迷うと言います。つまり、プロになれば、「こう打ったら、こうなる。」ということをかなりの先の先まで読むことは誰でもできますが、読みを重ねて自分でつくった戦略図の中から、どの読みが一番いいのだろうと「判断」することに多くの時間を使うわけです。

私が、井山さんが出演された「プロフェッショナル 仕事の流儀」の中で印象的だったのは、世界一を決める国際トーナメントでチャンピオンの中国人棋士と対戦した際に、冒険的な一手を打ったことで完敗し、30分間控え室から出て来れなくなってしまうシーンです。

その後、専門家と一緒に81手すべてを振り返り、「あの時の自分の判断は正しかったのか?」、「あの時の心境はどうだったのか?」を確認していくわけですが、私たち事業を行っている人達がここから学べることは、自分が行ったことに対する振り返りの大切さです。

井山さんのように冒険的な行動をして、それが良い結果に繋がらなかったという事実は別に悪いことではなく、むしろ新しいことに挑戦したという意味で良いことだとも言えます。

しかし、自分自身の振り返りをせず、他の誰かが悪かったとか、状況が◯◯だったので仕方が無かったなど、せっかくの失敗を浅い思考で振り返っていては、その失敗を次に繋げることはできないでしょう。

番組の中では、対局の後、井山さんが碁盤を見つめながら「なぜ、自分はその行動を取ったのだろう?」と何度も何度も振り返えるシーンがあります。

ハウスコムも20周年を無事に終え、従業員も1000人を超えて、次の新しいフェーズに向かっていくにあたり、いまやっていることを一回全部「溶かして」、再度組織を新しくデザインしていく必要があることでしょう。

先人は、「この四角い氷を丸くするにはどうしたら良いか?」という問いに対し、削って形を整えるのではなく、一回氷を全部溶かして、丸い器に入れ、再度凍らせて固めなさいと言いました。

まだ、ハウスコムの従業員が1000人ぐらいまでの時は、いまある氷を削って形を整えれば何とかなったのかもしれません。

しかし、これから従業員が2000人に向かっていくというフェーズの中では、一度ハウスコムという企業をすべて溶かし、自分の仕事や行動をすべて見直しながら、新しいストーリーを引き直すことで、ハウスコムをアップデートしていく必要があるのです。

ハウスコム株式会社
代表取締役社長:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。2016年度、中央大学商学部客員講師に。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

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