出産直後の母親、失業者が堂々と娯楽を楽しんで何が悪い。ハウスコム株式会社 – コラム – Vol.6

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「保育園落ちた、日本死ね」という言葉が流行語に選ばれた出来事は記憶に新しいですよね。

現代は、仕事をしていても子供を預けられないのが現状ですから、娯楽や文化に時間を割くなんてもってのほか、許してもらえないのが当たり前の世の中です。

そもそも、日本では娯楽や自分の時間を持つことに対し、サボりのイメージがあるのでしょう。基本的に娯楽や自分の時間を持つことに対してあまり良い顔はされません。「頑張るのが当たり前」「働くのが当たり前」と少しストイックに考えすぎる傾向があります。

それとは全く正反対のオランダでは、自分の時間を持つことが重要であるという認識が、社会の中に組み込まれていて、生まれてから3ヶ月になるまでに赤ちゃんを人に預けることを推奨しています。

なぜかと言うと、出産後は家事、育児に追われる疲労やホルモンバランスの乱れにより、9割の女性が育児ノイローゼになると言われています。それを少しでも手助けしようという試みですが、日本ではこのようなサポートや認識はほとんどありません。

このように、出産後は少しでも自分の趣味や気分転換の時間を作れるようなサポート体制を整えることが大切です。

オランダのように子育て中の母親や、失業中、もしくは生活保護受給者でも、映画や芝居を観に行っても後ろ指を指されない社会を作り上げることが出来たら、精神的に豊かな生活を送れる人が世の中に増えることは間違いないでしょう。

実は、まだ数は少ないですが、日本でもこれに近い事例はいくつか存在しているんです。

劇作家で、大阪大学と東京芸術大学で教鞭もとる平田オリザさんが率いるこまばアゴラ劇場は、2009年から雇用保険受給者(失業者)割引を実施し、年間会員料金の3万円が2万5千円になる取り組みをしています。

このような割引は、ヨーロッパの多くの美術館や劇場なんかでは、学割や障害者割引と並んで当たり前のようにあります。それはヨーロッパにある、「大変だからこそ、人生を楽しむ」という概念と、日本に比べて高い失業率、制度改革のしやすさ、それと、積極的な企業協力などが背景にあります。

残念ながら、日本ではまだまだこのような取り組みをしている機関は少ないですね。

また、TohoシネマズやMovix系列の映画館では、赤ちゃん連れのお母さんが映画館で映画を観られるようにと、授乳やオムツ替えスペースを用意した子連れ専用上映を行う、「ママズクラブシアター」や「ほっとママシアター」といった制度もあります。これは月に2回程度行っているようです。

T-joyプリンス品川では、映画の時間プラス休憩1時間、赤ちゃんを施設内の託児室で預かってくれる「シネマでママ休みプラン」というものも存在します。

かの宮沢賢治も『農民芸術概論網要』の中で、農民であれども、誰もが芸術に触れるべきだと理想を語ってるんですよ。

「そのむかし、俺たちのご先祖たちは貧しくてもそれなりに楽しく生きていた。そこには芸術も宗教もあった。いまの俺たちには、ただただ労働と生存があるだけだ。宗教は疲れ果て、近代科学に置き換えられ、しかもその科学は冷たくて暗い。」—-宮沢賢治

平成十三年に公布された文化芸術振興基本法の条文には賢治の言葉を擁護するかのように、「文化的な環境の中で生きる喜びを見出すことは人々の変わらない願いである」という一文があります。さらには、アートが多様性を認め、心を豊かにする平和への道筋だとも明記されているんです。

芸術に触れることが人々の変わらない願いで、心を豊かにするものだとしたら、お金や普段の生活に余裕がある人だけが楽しむものではないですよね。

お金がなかったり、普段子育てで忙しくて一人の時間がなかなか取れなかったりする人にも、心を豊かにするチャンスは平等にあってもいいと思うんです。

心が貧しくなってしまいそうな人こそ余計に、望めば映画や芝居に行ける機会の平等が用意されていなくてはなりません。

文化に触れたいという意志を持った人がそれを諦めなくてもいいような環境を少しでも作ることが、本当の意味で多様性を認めた、心豊かな社会と言えるのではないでしょうか。

サービス・イノベーション室:安達

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