リアルからテクノロジー、そして、またリアルへ「オールジャパンでGAFAに適応する」

令和元年11月12日(火)明治記念館にて開催されました日管協フォーラム2019というイベントで、「勝ち続ける仲介会社・管理会社」というテーマのディスカッションに参加して参りました。日本の不動産会社は20年前には14万社だったのに対して、現在は12万社と20年間で2万社も減っており、平均すると毎日2.7社の不動産会社が消えていることになります。

私が30年近く前にこの業界に入った時と比べれば、仕事のやり方は大きく変わりましたが、次の10年で過去30年間に起こった変化とは比べ物にならないほどの大きな変化がやってくることは間違いありません。

なぜなら、まだ実際には起こっていませんが、GAFAと呼ばれる巨大企業が不動産業界に参入してくれば、業界のエコシステム自体を大きく変えてしまう可能性があります。

フィンテックやオンラインバンキングが当たり前になり、大手銀行さんも店舗をどんどん減らしていく中で、不動産仲介会社はこれからどうしていくべきなのかというのが今回のディスカッションのテーマでした。

まず、どの企業さんも共通認識として上がったのが、お客様へのサービスの質を上げるためにペーパーレス、キャッシュレスなど、業務で効率化できるところは徹底的に効率化するというところでした。

中でも、ある不動産会社さんは、スーツや靴も同じものを何着も購入することで、毎朝服を選ぶ手間を省き、さらには、男性は年間単位で考えるとほぼ丸一日髭剃りに時間を使っていることから、脱毛して毎朝髭を剃る手間を無くすことで、徹底的に効率化をはかっているのだと言います。

わざわざ店舗に来店してくれるお客様にネット上に載っている情報を一生懸命説明しているだけでは、仲介業者の存在意義は薄くなっていく一方です。また、物件の鍵にしても、ブルートゥース1つで開けられるようになるのであれば、そういったものも今後は仕事とは呼ばれなくなっていくことでしょう。

2002年の世の中の情報量を10とすると、2020年の情報量はその6000倍の6万に匹敵するとも言われ、お客様は調べようと思えば、自分に必要な情報を全部自分で調べることができます。

我々、仲介業者としては、部屋や近所周辺の情報をしっかりと伝えてあげることはもちろん重要ですが、その地域に根付いている不動産屋さんだからこそ分かる、「ちょっとした未来」を語ってあげることが、これからの仲介手数料をいただく一番の付加価値になっていくのかもしれません。

リアルな不動産店舗は、外部から引越してくるお客様にとっては、一番最初に接点を持つ場所なので、我々がどのようにコミュニケーションを取るかによって地域の印象は大きく変わってきます。そして、何より我々が地域の門となってお客様達と良いコミュニケーションを繰り返すことで、次第にそこには、新しいコミュニティができていくことでしょう。 

他の企業さんからも「人間力」という言葉が頻繁に出ましたが、ネットの世界が広がれば広がるほど、人間の誠実さというものがより大切になってきます。

現在、GAFAなどの企業が目の前に迫り、大きな時代の転換期を迎えている中で、「私たち賃貸仲介業者の役割は一体どういったものなのか?」ということを再度考えてみることが必要です。

マクドナルドはただハンバーガーを販売しているお店ではなく、駅前でサクッとお腹を満たして、効率的に時間を手に入れるサービスを提供している会社。スターバックスはただコーヒーを販売しているのではなく、家にゆっくりと読書ができる書斎がない人がくつろげる場所を提供している会社。

こう考えていくと、賃貸仲介業者はただお客様に合った適切な部屋を紹介するサービスを提供するのではなく、地域コミュニティのハブとなったり、住まいを通じて新しいライフスタイルを提供するなど、視点を少しズラすことで、生み出せる付加価値はたくさんあるのではないでしょうか。

ローソクは電気がなかった時代に明かりを灯すものでしたが、電気が発明されると部屋でローソクを使う人はいなくなりました。

しかし、現在アメリカでは、ローソクを買う人の9割が「リラックスするために購入する」と答えており、電気という破壊者が現れて大打撃を受けた時、香りという新しい付加価値を加えたことで、ローソクは新しい市場を生み出したのです。

アマゾンで買い物をするような感じで、部屋を選ぶ日が5年〜10年後にはやってくるかもしれません。そうなった時、ハウスコムであれば、「この地域の新しい情報を仕入れるためにハウスコムに行く。(そのついでに部屋を借りる)」といった感じで価値提供の視点をズラしていくことが間違いなく求められるようになっていくでしょう。

現在、人々はSNSなどで繋がっているように見えて、日々孤独を感じています。これは従来日本には当たり前のように存在していた地域のコミュニティがどんどん衰退しているからであり、地方自治体がこういった問題を解決できないのであれば、企業がビジネスの力を使って解決していかなければなりません。

これまでの企業と言うのは、ビジネスで得た利益をNPOなどに寄付して社会問題を解決するサポートをして参りましたが、これからは、まずは社会問題を解決することを第一に考え、それが回り回ってビジネスに繋がっていくという逆の現象が起こっていくことでしょう。

GAFAのような企業は、ユーザーの動きを徹底的に分析して、最適なものを効率よく提供してくれます。しかし、地域でのコミュニケーションを活性化させ、地域の新しいコミュニティをつくっていくのは、しっかりとリアル店舗を構え、地域の門としての機能を果たしている地元の不動産会社にしかできません。

現在、不動産業界は勝ち組、負け組に分かれつつありますが、豊かな地域コミュニティは日本全体の不動産会社が協力してオールジャパンで作り上げていくものです。

これからは、「競争」ではなく、「共創」の時代です。

一緒に日本の不動産業界を盛り上げて参りましょう。

ハウスコム株式会社
代表取締役社長執行役員:田村 穂

<プロフィール>
経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。2016年度、中央大学商学部客員講師に。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後、不動産業界での経験を経て、1994年に同社入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月に社長に就任。賃貸仲介業から賃貸サービス業への変革を進め、人工知能などのITテクノロジーを活用したユーザー向けサービス・プラットフォーム「マイボックス」をリリース。自社のビッグデータを活用し、オープンサービス・イノベーションラボを展開。社会・地域に貢献できる不動産テック企業を目指す。

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